荒れたお庭の再生
安定した環境を捨て、夢を持って臨んだ移住。
一目惚れした旅館は最高であり、また最低であった。
数年間空家になっており、
建物は雨漏りや床の腐りがあり、
その昔、たくさんのお客様を喜ばせていた美麗なお庭は、その姿さえなく雑草の繁茂する荒地と化していた。
「こんな素晴らしい旅館を朽ちさせる訳にはいかない」
建物は地元の職人さんにお任せし、
でもせめて自分の手でこの旅館に何かをしてあげたい、
そう思って庭の再生は自分ですると決意した。
何も知らない、鍬一つ持ったことのないど素人の私が。
初めて草刈機を持ち、
そのあまりの刃の切れ味と音に
恐怖と後悔を覚えたあの日。
でも、旅館再生のため、お客様のため、自分のため、
そして応援してくれる仲間のため、勇気を持って進む。
それがいつの日か、
楽しんで作業をしている自分に
出会えた。
広大な庭は作業してもしても、中々終わらない。
そのうち季節は冬になり、あたり一面を白く染める。
それは数ヶ月作業が出来なくなる事を示していた。
何も出来ず悶々とした日々を過ごしていたが、
それでも、それならば、
と、建物を毎日磨き上げる日々。
1日も欠かさず磨いた床は、今ではぼんやりとだが、
姿を映すまでになっている。鏡の様な床ってあるんだね。
そうして迎えた春。待ちに待った春。
風の暖かさに思わず顔がほころぶ。
ただただ、雑草を刈っているだけなのに、なぜか楽しい。
そして、今、往時の、とまでにはいかないかもだけど、
素敵なお庭が出来た。
前オーナーさんが心を込めて作った、
たくさんのお客様を喜ばせてきたお庭がやっと見えてきた。
まだまだこれからだけど、
この旅館をお庭を歴史を大切にしていきたい。
それが前オーナー、
職人さん、
応援してくれる仲間、
遊びにきてくださるお客様、
皆様への恩返しだと思う。
1日1組限定の宿 那須yobou → 那須yobouホームページ
0コメント